日本の家紋は2万種類以上存在すると言われていますが、その中で「五大紋」と呼ばれるのが、藤紋・桐紋・鷹の羽紋・木瓜紋・片喰紋です。なかでも「丸に五三の桐」は、全国の墓石や仏具で最も頻繁に目にする意匠の一つとなっています。
この紋が爆発的に普及した決定的な転換点は、明治8年(1875年)の「平民苗字必称義務令」にあります。それまで公の場で苗字を名乗ることが許されていなかった一般庶民が、苗字とともに自分たちの家紋を登録・制定する必要に迫られました。
当時、多くの庶民は自家の固有紋を持っていませんでした。そこで重宝されたのが、誰でも自由に使える「通紋(とおりもん)」や「貸紋(かしもん)」という概念です。格式が高くデザインとしても洗練されており、かつて太閤・豊臣秀吉が民衆に広めた親しみやすい桐紋、とりわけ親しみやすい「五三桐(ごさんぎり)」に丸を付けた意匠が、全国の家々で一斉に採用されました。