都市の夜の過ごし方が多様化する中、ナイトタイムエコノミーの文脈でもバーは重要な役割を担っている。深夜の街を彩る新たなトレンドとして注目を集めているのが、禁酒法時代のアメリカを模したスピークイージー(隠し扉のバー)の再興だ。
一見すると古びたレコードショップやサンドイッチスタンドの奥に、本棚や自動販売機に偽装された隠し扉が存在する。暗証番号を入力して扉を開けると、そこには外観からは想像もつかないラグジュアリーなバー空間が広がる。この「知る人ぞ知る秘密の空間へ足を踏み入れる高揚感」は、消費体験に物語性を求める現代の大人たちの心を強く惹きつけてやまない。
ただ酒を飲む場所ではなく、日常から非日常へと鮮やかに切り替わる舞台装置。夜の経済を活性化させる原動力は、単なる営業時間の延長ではなく、訪れる者を物語の主人公へと仕立て上げる演出力にある。