コウの持つ狂気的な光と対極をなす存在として、物語に決定的な温度を与えたのが重岡大毅演じる大友だ。夏芽の傷ついた心に寄り添う大友の存在は、観客にとって唯一の息がつける救いとなった。眉毛を整えずに撮影へ臨んだという逸話からも窺える通り、重岡のナチュラルで温かな演技は、作品に生々しいリアリティを注入している。
カラオケで吉幾三の『俺ら東京さ行ぐだ』を歌うコミカルな場面でも、その裏には夏芽を笑顔にさせたいという愚直なまでの優しさが溢れていた。菅田演じるコウのカリスマ性とは対照的に、日常の温もりを提示した重岡の演技力は、本作のドラマ性をより深く多層的なものへ引き上げた。