一度追い払ったはずなのに、なぜ彼らはしつこく同じ場所へと舞い戻ってくるのか。その答えは、鳥類の目線に立ってみると見えてくる。
鳥類学の第一人者である東京大学の樋口広芳名誉教授らの研究によると、鳩は極めて高度な帰巣本能と地勢を記憶する高い学習能力を備えている。都市部に建ち並ぶマンションのベランダや室外機の隙間は、本来の生息地である断崖絶壁の岩棚に驚くほど似ているのだ。天敵であるハヤブサやカラスの視線を遮り、雨風を凌げる構造は、彼らにとってまさに「理想の要塞」と言える。
一度そこを安全な繁殖地と認めた鳩は、強い執着心を示す。中途半端な脅しや追い払い程度では諦めず、隙を見つけては何度でも戻ってくる。巣を取り除いたとしても、空間そのものの環境を変えない限り、執念深い帰還を阻止することは不可能なのだ。