ロックやポップスの歴史を紐解けば、偉大な楽曲の骨格がいかに簡潔であるかに驚かされる。トニック(主音)、ドミナント(属音)、サブドミナント(下属音)という3つの基本和音で構築される「スリーコード進行」は、ブルースやフォーク・ミュージックの時代から音楽産業を根底で支え続けてきた不変のフレームワークだ。
映画『BECK』で描かれたような衝動的なガレージロックから、スタジアムを熱狂させるポップチューンまで、核にあるのはこの最小限のコードワークに他ならない。エリック・クラプトンが爪弾くブルースの哀愁も、根源を辿ればわずか3つの和音が織りなす緊張と緩和のドラマである。複雑なテンションコードを重ねずとも、人間が心地よいと感じる音楽的カタルシスは完全に生み出せる。