ネット上の掲示板やSNSでは、「法事で回向文を唱えて先祖にパワーを送った」といった解釈が散見されますが、これは伝統宗派と浄土真宗の教義上の違いを混同した代表的な誤解です。
一般的な仏教宗派(浄土宗、真言宗、曹洞宗、臨済宗など)では、生きている人間が善行(追善供養)を行い、その功徳を故人へ振り向ける「往相回向(おうそうえこう)」の形式をとります。一方、親鸞を開祖とする浄土真宗では、凡夫である人間が仏に対して自力で功徳を捧げるという考え方を厳格に否定します。
浄土真宗における回向は、阿弥陀如来から私たち衆生に向けて差し伸べられる救いの働き(他力回向)を指します。善導大師の『観経疏』に由来する「願以此功徳 平等施一切 同発菩提心 往生安楽国」という回向文も、阿弥陀仏が一切衆生に平等に救いの功徳を施してくださることに対する報恩感謝の言葉として唱えられます。「追善供養のために回向文を唱える」という発想自体が、浄土真宗の根本義とは異なる点に注意が必要です。