「きのこたけのこ戦争」を巡っては、インターネット上で長年まことしやかに囁かれている都市伝説や事実誤認が数多く存在します。報道各社の取材データおよび株式会社明治の公式発表資料に基づき、代表的な2つの誤解を是正します。
誤解1:「きのこの山は売れない失敗作から生まれた」という俗説
ネット上では「アポロチョコの売れ残りを再利用するために無理やりクラッカーを刺したのがきのこの山」という噂が流布されることがありますが、これは正確ではありません。開発当時(1970年代初頭)、大ヒットしていた「アポロ」の生産設備を活用し、オイルショック後の新しい看板商品を作ろうとしたのは事実ですが、それは綿密な技術革新の賜物でした。
当時の菓子業界では「チョコレートにビスケットを組み合わせる」という発想自体が極めて珍しく、社内プレゼンでは「キノコはお菓子にふさわしくない」「不気味だ」と猛反発を受けました。開発陣は数年をかけて成形技術やパッケージデザインを磨き上げ、1975年に満を持して全国発売へと漕ぎ着けたパイオニア商品なのです。
誤解2:「明治社内でも派閥が真っ二つに割れている」というイメージ
メディアの演出によって「社内でもきのこ派とたけのこ派が激しい権力闘争をしている」と面白おかしく語られがちですが、明治の公式見解は極めて冷静かつ戦略的です。歴代のブランドマネージャーや広報担当者が公の場で語っている通り、この戦争は「消費者が自発的にブランドを語りたくなる文脈」を創出するための卓越したリレーションシップ・マーケティングです。
両者が競い合い、互いの長所をファン自身に語らせることによって、莫大な広告費をかけずとも常に店頭で想起される状態(純粋想起)を半世紀にわたって維持し続けています。社内において両製品は対立する存在ではなく、互いの売上を牽引し合う最強の「共生パートナー」として位置づけられています。