そもそも「ゴリラ」という単語自体、どのようなルーツを持って誕生したのでしょうか。その歴史を遡ると、紀元前5世紀の地中海世界にまで行き着きます。
古代カルタゴの探検家ハンノが率いた西アフリカ沿岸航海の記録『ペリプルス(航海記)』の中に、現地の島で遭遇した「体毛が濃く、野性的な人々」を指して現地の通訳が呼んでいた言葉、ギリシャ語の「Γόριλλαι(Gorillai:毛深い女たち、あるいは毛深い部族)」という記述が存在します。これが記録に残る最古の語源とされています。
その後、2000年以上の時を経た1847年、アメリカ合衆国の宣教師であり医師でもあったトーマス・ストーブン・サベージ博士と、解剖学者のジェフリーズ・ワイマン博士が、西アフリカのリベリアで入手した頭骨や骨格標本を共同研究し、新種の大型類人猿として科学雑誌に記載しました。その際、古代ハンノ航海記に登場した野性味あふれる名称を蘇らせ、種小名に「gorilla」と命名したことが近代科学におけるゴリラ命名の決定的な第一歩となりました。
最初はチンパンジーと同じ属(Troglodytes)に分類され、「Troglodytes gorilla」と名付けられていましたが、その後の解剖学的比較研究の進展に伴い、チンパンジーとは独立した独自の「ゴリラ属(Gorilla)」が新設されました。この学術的な再編によって属名と種小名が合致し、さらに亜種区分の確定によって「Gorilla gorilla gorilla」という反復学名が完成したのです。