四日市市の歴史を語る上で避けて通れないのが、1960年代から1970年代にかけて発生した四大公害病の一つ「四日市ぜんそく」です。石油化学コンビナートの稼働に伴う亜硫酸ガスなどの有害物質は、塩浜地区をはじめとする周辺住民の呼吸器を蝕み、多数の犠牲者を生み出しました。1972年の公害裁判判決では企業の共同不法行為が認められ、原告勝訴が確定します。
しかし、四日市の真の強さはその後の歩みにあります。官民一体となった排煙脱硫装置の大規模導入、工場排出基準の劇的な強化、大気監視システムの整備など、半世紀に及ぶ徹底的な環境投資が敢行されました。現在、環境省の測定データにおいて四日市市の大気質は全国の主要都市と同等以上の清浄基準をクリアしており、その高度な公害防止ノウハウはアジア諸国への国際環境技術協力(ICETT)として広く輸出されています。
そして現在、かつての煙害を克服した臨海コンビナートは、「工場夜景」という新たな文化的・観光的価値へと昇華を遂げました。川崎、室蘭、周南、北九州と並ぶ「日本五大工場夜景都市」の一角として、全国から写真愛好家や観光客を惹きつけています。
主な観賞ポイントとしては以下が挙げられます:
- 四日市港ポートビル「うみてらす14」:地上90mの展望展示室から見下ろすパノラマ夜景。光の幾何学模様が漆黒の伊勢湾に浮かび上がる光景は日本夜景遺産にも認定。
- 大正橋周辺:立ち並ぶ配管や煙突のディテールを間近で捉えることができる、重厚な質感を好む撮影者の定番スポット。
- 四日市港夜景クルーズ:海上から見上げるコンビナートの圧倒的な迫力とフレアスタック(余剰ガスの燃焼炎)は、陸上からは決して味わえない異世界感を体験可能。