WebのQ&AサイトやSNS上で頻繁に見受けられる典型的な誤用が、「耳が痛い」と「身につまされる」の混同です。
例えば、「倒産寸前の中小企業のドキュメンタリー番組を見て、経営陣の苦悩に耳が痛くなった」という書き込みがありますが、これは明確な誤用です。もし視聴者自身が会社の経営者で、同じような杜撰な資金管理をしていて後ろめたいなら「耳が痛い」でも成立しますが、単に他人の不幸や苦境に胸を締め付けられ、共感しているだけであれば、正しくは「身につまされる」を使わなければなりません。
「身につまされる」の「つまされる」は「思い知らされる」の意であり、他人の苦難や境遇が自分のことのように思われて深く同情する心理状態を指します。両者の明確な境界線は「そこに自分自身の過失や非(後ろめたさ)が存在するかどうか」です。
「他人の痛みを我がことのように感じる(同情・共感)」なら「身につまされる」。「他人の正論によって自分の非を思い知らされる(反省・自責)」なら「耳が痛い」。この一線を把握しておくだけで、文章の説得力は劇的に向上します。