耳は正常なのに聞こえない?聴覚情報処理障害のチェックリストと真因

耳は正常なのに聞こえない?聴覚情報処理障害のチェックリストと真因

耳は正常なのに聞こえない?聴覚情報処理障害のチェックリストと真因について知っておくべき ポイントを分かりやすい構成で解説いたします。

聞き取りの難しさを訴える患者が医療機関を受診した際、現場の専門医は「加齢性難聴や突発性難聴などの器質的難聴」「発達障害(ADHD/ASD)」「APD/LiD」の鑑別診断を慎重に行います。これらは症状の一部が重複しているため、しばしば混同されがちです。

臨床データと専門医の知見に基づき、それぞれの差異を構造的に比較したのが下表です。

分類・項目純音聴力検査の結果主な病態・発生メカニズム主たる確定診断の手順・基準一般的な感音難聴異常あり(25dB以上の閾値上昇)内耳の有毛細胞や聴神経の物理的損傷、加齢による機能低下標準純音聴力検査、語音聴力検査による閾値測定聴覚情報処理障害(APD/LiD)完全正常(全周波数で20dB以下)脳幹から大脳皮質聴覚野に至る音響情報の弁別・処理機能の低下聴力正常+雑音下語音検査、両耳分離聴検査、時間分解能検査での機能低下注意欠如・多動症(ADHD)完全正常(聴覚器に病変なし)前頭前皮質のドーパミン機能不全による選択的注意維持の困難、衝動性精神科・心療内科での心理検査(CAARS、WAIS-IV)、生育歴聴取自閉スペクトラム症(ASD)完全正常(特定音への過敏あり)感覚過敏(聴覚過敏)による過負荷、言葉の文脈・非言語情報の処理困難心理検査(ADOS-2、AQ)、コミュニケーションパターンの診察

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会などの関連学会や専門医が提示する必須条件として、APD/LiDの確定診断には「1. 聞こえづらさの明確な自覚があること」、そして「2. 純音聴力検査および標準語音聴力検査で明らかな閾値異常が認められないこと」が前提となります。その上で、背景に雑音を混ぜた状態での「語音弁別検査(SN比検査)」や、左右の耳から異なる言葉を聞かせる「両耳分離聴検査」を実施し、1つ以上の情報処理機能に明らかな低下が確認されて初めて診断へと至ります。

また、臨床データにおいて注目すべきは「発達障害との重複率の高さ」です。受診患者の約半数から7割近くに、ADHDやASDの傾向、あるいはワーキングメモリ(作業記憶)の脆弱性が認められるケースが報告されています。集中が切れて音声を取りこぼすADHD特性と、音そのものの解析が追いつかないAPD特性が相互に重なり合うことで、問題が深刻化している実情が浮き彫りになっています。

阿部 裕樹
著者

阿部 裕樹

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。