後鼻漏 喉の痰が絡む理由を正しく理解するには、鼻と喉の構造的関係に目を向ける必要があります。健康な成人の鼻腔からは、1日に約1〜1.5リットルもの粘液が分泌されており、その大半は無意識のうちに喉へと流れて飲み込まれています。ところが、分泌物の量が増加したり、粘度が過度に高くなったり、あるいは咽頭粘膜の知覚が過敏になると、「喉に異物がへばりついて切れない」という自覚症状=後鼻漏へと変貌します。
現在、耳鼻咽喉科の臨床現場で後鼻漏の主因として最も重視されているのが「慢性上咽頭炎(まんせいじょういんとうえん)」です。鼻の突き当たり、喉ちんこの裏側に位置する上咽頭は、吸い込んだ空気中のウイルスや細菌が最初に衝突する免疫の最前線です。ここが慢性的な炎症を起こすと、粘膜から粘り気のある滲出液が分泌され続け、喉へ垂れ落ちて痰のように絡みつきます。
後鼻漏 上咽頭炎 治療の真相を追跡すると、近年注目されているのが塩化亜鉛溶液を上咽頭に直接塗布する「Bスポット療法(EAT:上咽頭擦過療法)」です。激しい痛みを伴う治療法ですが、炎症組織を凝固・収縮させ、迷走神経刺激を介して自律神経の過興奮を鎮静化させるため、週1〜2回の通院を2〜3ヶ月継続した患者の約7割に著効がみられると報告されています。
一方、伝統医学(東洋医学)の観点からは、後鼻漏は単なる「鼻の局所病変」とは捉えません。武蔵小杉鍼灸接骨院をはじめとする臨床鍼灸の現場知見によると、後鼻漏の根本原因は「胃腸の働きの弱り(脾虚)」または「呼吸器の弱り(肺虚)」に起因すると説明されます。東洋医学の病態生理では、消化器(脾)が弱ると摂取した飲食物を正常なエネルギーに変えられず、体内に病的な水分である「痰飲(たんいん)」や「湿邪(しつじゃ)」を生み出します。その過剰な余剰水分が、呼吸器(肺)のバリア機能低下に乗じて上気道へと湧き上がり、喉に垂れ下がるネバネバした鼻水や痰の正体となるわけです。