保育室の壁面を彩る作品を見た保護者から、「うちの子、こんなに綺麗に毛糸を巻けるようになったんですか?」と驚かれ、返答に窮したという保育士の声は少なくありません。ネット上のおしゃれな保育アイデア投稿が過熱するにつれ、現場には深刻な「完成度の罠」が生じています。
大人が目や口の位置を整え、外れた毛糸を巻き直し、寸分の狂いもない見本通りのミノムシをずらりと並べる展示は、保護者への見栄えは良いかもしれません。しかし、発達心理学の観点から見れば、それは子どもの自己肯定感を奪う行為に他なりません。子どもは「先生が手を入れた=自分のやり方はダメだった」というメッセージを無意識に受け取ってしまいます。
目が頭のてっぺんについていても、落ち葉が逆さまに刺さっていても、それが子どもの観察眼と現在の身体感覚のありのままの表出です。作品の横に「〇〇ちゃんは、ミノムシさんが前を見やすいように大きなおめめを上につけてあげました」といった保育者のエピソード記述(ドキュメンテーション)を添えることこそが、保護者との本質的な信頼関係を築きます。