足元のふらつきや歩行の不安定感を自覚した際、多くの人が陥りがちな重大な誤解が2つあります。1つは「耳鼻科領域のめまい症」との混同、もう1つは「加齢による筋力低下(サルコペニア)」への短絡的な帰着です。
ネット検索で「ふらつき」「バランスが取れない」と調べると、良性発作性頭位めまい症やメニエール病といった耳の疾患が上位に表示されがちです。そのため、「天井が回っていないから自分は大丈夫」「耳鳴りがないから病気ではない」と判断を誤り、後索障害の発見が半年以上遅れるケースが後を絶ちません。前庭性(耳)のめまいは首を動かした瞬間に回転性の感覚を伴うことが多いのに対し、深部感覚障害は「頭の回転とは無関係に、視覚を遮断した際に足元が定まらない」という決定的な違いがあります。
また、「最近つまづきやすいのは足腰の筋肉が衰えたからだ」と思い込み、無暗にスクワットなどの負荷トレーニングを始めて関節を痛めてしまう高齢者も散見されます。問題の根源が「筋力(出力を出す側)」ではなく「感覚(脳に入力する側)」にある場合、いくら筋トレを行ってもふらつきは改善しません。出力に見合う正確な情報が脳に届いていない状態での負荷運動は、かえって転倒・骨折のリスクを跳ね上げる危険な行為です。