インターネット上の掲示板やSNSでは、「忌避剤を投げ込めば一発で逃げていく」「捕獲カゴを置いて山へ捨ててくれば解決する」といった安易な情報が散見されます。しかし、これらの言説を真に受けて自力行動を起こすと、法的な処罰の対象となったり、被害をさらに悪化させたりするケースが後を絶ちません。
第一の巨大な障壁が、鳥獣保護管理法の捕獲許可申請に関わる法規制です。ハクビシンもタヌキも、野生動物として法的に厳格に保護されています。いかに自宅を荒らされている被害者であっても、行政(市区町村長)からの正式な捕獲許可証や有害鳥獣捕獲申請を受理されていない一般人が、罠を設置して捕獲・殺傷することは固く禁じられています。これに違反した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金という重い刑事罰が科される可能性があります。
第二の盲点は、家屋侵入経路と自力対策の限界です。「隙間をホームセンターの金網で塞いだ」と自負する住宅の多くが、短期間で再侵入を許しています。ハクビシンは極めて柔軟な骨格構造を持っており、頭さえ入れば直径8〜9cm程度の隙間(テニスボール大、煙草の箱サイズ)を容易にすり抜けて侵入します。エアコン導入管の隙間、軒下の通風口のわずかな破れ、瓦の浮き、換気扇の隙間など、木造住宅には素人の目では見落としてしまう侵入経路が無数に存在します。
市販のバルサンや木酢液、超音波発生器を用いた追い出しも、一時的な効果に留まるケースが大半です。野生動物は危険がないと学習するとすぐに慣れて戻ってきます。特に屋根裏に出産期(春〜初夏)の子どもが取り残された場合、母親は猛烈な執着を見せて周囲の壁を破壊してでも戻ろうとするため、生兵法な追い出しは事態を泥沼化させる引き金となります。