歯茎下がりを食い止めるどころか、本人の善意によるケアが症状を劇的に悪化させているケースが後を絶ちません。その二大要因が「清掃剤(研磨剤)」と「過剰なブラッシング圧」です。
市販の一般的なペースト状歯磨き粉には、ステインを除去するために無水ケイ酸や炭酸カルシウムといった研磨粒子が配合されています。エナメル質に覆われた歯冠部であれば問題ありませんが、歯茎が下がって露出した歯根部(セメント質や象牙質)は、エナメル質に比べてモース硬度が極めて低く、非常に柔らかい組織です。研磨剤入りの歯磨き粉をつけて強い力で磨き続けると、歯の根元が削れてくさび状の溝ができる「くさび状欠損(アブフラクション/摩耗症)」を誘発します。
ここで極めて重要になるのが、研磨剤無配合歯磨き粉の選び方とブラッシング圧と歯茎下がりの関係です。臨床試験のデータによれば、歯茎を痛めない理想的なブラッシング圧は「100g〜150g(歯ブラシの毛先が広がらない程度の力加減)」とされています。しかし、自己流で磨いている人の多くは300g以上の過剰な圧力をかけており、これが歯肉を物理的に削り取る直接的な原因となっています。
根元が削れて象牙質が露出すると、内部の象牙細管を通じて冷水や温水、ブラシの毛先による刺激が神経へ直達し、耐え難い痛みが生じます。これに対する歯茎下がりと知覚過敏の対策としては、低発泡・研磨剤無配合のジェルタイプを選び、露出した象牙細管を封鎖する乳酸アルミニウムや神経を鎮静化させる硝酸カリウムを含む製品を併用することが基本戦略となります。