消費者が抱く最大の疑問は、「なぜわざわざカスタードクリームと呼び分けるのか」「洋菓子店のカスタードと何が違うのか」という点に集約されます。両者を分かつ決定的な境界線は、「耐熱性(包餡焼成適性)」と「微生物学的な保存性」にあります。
伝統的な洋菓子のカスタードクリーム(クレーム・パティシエール)は、牛乳、卵黄、砂糖、ごく少量の薄力粉やコーンスターチを合わせ、弱火でとろみがつくまで炊き上げて作られます。卵の熱凝固性とでん粉の糊化を絶妙なバランスで利用した極めて繊細な食品であり、水分量が非常に多く、卵本来の風味が際立つ反面、致命的な弱点を2つ抱えています。
第1の弱点は「熱に極端に弱い」ことです。伝統的なカスタードをパン生地で包んでオーブン(約200℃)に入れれば、内部の水分が一気に沸騰して蒸気圧が上がり、パン生地を突き破って外へ噴き出してしまいます。さらに熱が通り過ぎると卵のタンパク質が凝固して水分と油分が分離し、ボソボソとした食感に崩壊してしまいます。
第2の弱点は「日持ちが極端に短い」ことです。水分活性が高く、殺菌しきれない耐熱性菌が残存しやすいため、常温放置すれば半日足らずで食中毒のリスクが高まります。洋菓子店のシュークリームが「本日中にお召し上がりください」「要冷蔵」とされるのはこのためです。
これに対し、フラワーペーストはパン生地と一緒に高温のオーブンで焼き上げること(包餡焼成)を前提に設計されています。小麦粉と化工でん粉を高度に配合することで強固なゲル構造を形成させ、加熱時にも内部の水分をがっちりと抱え込んで離水を防ぎます。製造工程で完全密閉のまま加熱殺菌処理が施されるため、未開封状態であれば常温で長期間の流通に耐える安定性を発揮するのです。