デルタナインキッドの書くリリックに宿る圧倒的な説得力は、フィクションでは決して描き得ない過酷な生い立ちと実体験に裏打ちされています。
少年時代から地元の不良仲間とともに荒れた日々を送り、やがてBADSAIKUSH(バダサイクッシュ)らと出会い「舐達麻」の前身となる集団を結成しました。しかし、彼らの青春期は常に危険と隣り合わせでした。十代の終わりに起きた痛ましいバイク事故により、グループの初期メンバーでありかけがえのない親友であった104(トシ)を失うという悲劇に見舞われます。
この深い喪失感と悔恨は、デルタナインキッドの表現の根底に流れ続けています。その後も生活を立て直すことは容易ではなく、生きるための手段として手を染めた金庫破りなどの事件により逮捕され、刑務所への服役を経験することとなりました。約数年間に及ぶ獄中生活のなかでペンを執り、己の内面と向き合い続けた時間が、今日のメロウで知的なラップスタイルを形作る決定打となったのです。