日本映画界において、独自の異彩を放ち続けた女優といえば樹木希林の名を外すことはできません。飾らない佇まいと、人間の矛盾や滑稽さをまるごと包み込むような演技力。彼女がカメラの前に立つだけで、画面の空気は一変し、そこに本物の生活の匂いが立ち込めました。
是枝裕和監督による名作『万引き家族』で見せた老婆役は、まさに彼女の集大成とも言えるハマリ役でした。社会の片隅で暮らす家族の絆と虚構を、言葉少なな佇まいで表現した姿は世界的な賞賛を浴びました。単なるヒューマンドラマの枠を超え、生と死、人間の業を見つめ直させるその迫真の芝居は、今なお後進の役者たちに大きな影響を与え続けています。