日本のクレープ文化を語る上で、1970年代後半に原宿・竹下通りで産声を上げたマリオンクレープの存在は外せない。紙巻きスタイルで食べ歩くという革新的なアイデアは瞬く間に全国へ広がり、若者カルチャーの象徴となった。しかし、現在の外食産業においてクレープが占める位置付けは、単なる懐かしのストリートスナックにとどまらない。
いま市場を牽引しているのは、本場フランス菓子の技法を注ぎ込んだ高級路線だ。発酵バターの王様として知られるエシレバターを惜しみなく塗り広げ、カソナード(きび砂糖)だけでシンプルに仕上げる「シュガーバター」の台頭がその証拠だ。ホイップクリームやフルーツで覆い隠すのではなく、生地そのものの焼き加減や粉のブレンドで勝負する専門店が急増している。日常のワンコインスナックから、大人がわざわざ足を運ぶパティスリー級の一品へ。その劇的な変貌が、幅広い世代の舌を唸らせている。