近年、地方の食文化や職人の営みを直接体感することを目的としたフードツーリズムが、国内外の旅行者の間で急速な高まりを見せている。和菓子業界全体でも、単に完成品をデパ地下で買い求めるだけでなく、その背景にある風土やストーリーを五感で味わいたいという需要が定着した。
佐伝の拠点を擁する地域にも、わざわざ遠方から足を運ぶ熱心なファンの姿が目立つ。焼き上がりの香ばしい煙が漂う工房の周辺を歩き、近隣の茶房で淹れたての深蒸し茶とともに焼き立てをいただく体験は、旅のハイライトとして旅情を強く刺激する。
観光地化された派手なアトラクションは何一つない。だが、軒先に並ぶ素朴な佇まいと、土地の水と米で仕込まれた滋味深さは、旅人たちに本物の豊かさとは何かを静かに問いかけてくる。