ぶりぶりざえもんが放つ独特の美学は、文学や演劇における「ピカレスク(悪漢・トリックスター)」の系譜に位置づけられます。表面的には私利私欲の塊でありながら、なぜ視聴者は彼を憎むことができないのでしょうか。
心理学的な観点から見ると、ぶりぶりざえもんは人間が社会生活の中で抑圧している「弱さ」「卑怯さ」「自己愛」をあからさまに代弁してくれる存在です。「危険から逃げ出したい」「得をしたい」「強いものに巻かれたい」という本音を、気品ある低音ボイスで堂々と宣言する姿に、観客は無意識の解放感(カタルシス)を覚えます。
さらに決定的なのは、彼が決して「根っからの悪人」ではないという点です。どれほど見苦しく寝返っても、しんのすけが本当に命の危険に晒された極限状態では、自らの損得勘定をかなぐり捨てて盾になります。「普段は徹底して不真面目だが、ここ一番では魂を見せる」というギャップの落差が、人間心理において極めて強い好意と信頼を形成するのです。