ネット上の掲示板やSNSを中心に、「私立中学校の授業料が実質無償化される」「全額補助が出る自治体がある」といった噂が定期的に浮上します。中学受験を検討している家庭にとって極めて魅力的な響きですが、この情報の多くは制度の誤認と過度な誇張に基づいています。
根本的な前提として、日本国憲法第26条において「義務教育は、これを無償とする」と定められている対象は、自治体が設置する公立小中学校の授業料や教科書代です。私立中学校は保護者が独自の教育方針や教育環境を求めて任意に選択するものであるため、国が一律に授業料を全額肩代わりする法的な枠組みは存在しません。
噂が広まった背景には、2024年度から東京都や大阪府などで段階的に進められた「私立高校の授業料実質無償化(所得制限撤廃)」のニュースとの混同があります。高校において国の就学支援金と自治体独自の上乗せ助成を組み合わせた「年約40万〜60万円規模の支援」が話題となった結果、「中学校も同じようにタダになるのでは」という憶測がひとり歩きしてしまいました。
文部科学省の「子供の学習費調査」によると、私立中学校の年間総学習費は平均約140万円〜150万円に達します。このうち授業料だけでも年間40万〜60万円程度を占めていますが、後述する東京都の支援策であっても助成額は年額10万円にとどまります。実質無償化どころか、年間の学費負担の大部分は依然として各家庭が負担しなければならないのが揺るぎない現実です。