サー・ナイトアイを語る上で避けて通れないのが、かつての盟友・オールマイトとの確執です。二人は5年間にわたり相棒としてヴィランを震え上がらせていましたが、物語開始の6年前に決定的な決裂を迎えていました。
確執の発端は、オールマイトがオール・フォー・ワンとの第1次決戦で呼吸器半壊の大重傷を負った事件にあります。主治医やナイトアイの制止を振り切って活動を続けようとするオールマイトに対し、ナイトアイは個性「予知」を使用しました。そこで視てしまったのが、「数年後、オールマイトが正体不明のヴィランと対峙し、凄惨な死を遂げる」という未来でした。
ナイトアイは活動を停止して引退し、後継者を探してワン・フォー・オールを譲渡することを涙ながらに懇願しました。しかしオールマイトは「世の中には平和の象徴が必要だ」と頑なに拒否。二人は互いを深く愛し、尊重していたからこそ妥協できず、袂を分かつことになったのです。この「救えなかった相棒の命」への執念が、彼を通形ミリオの育成へと駆り立てていました。
そして最期の病室で、二人は6年ぶりの和解を果たします。オールマイトは自らの頑迷さを詫び、出久が予知を捻じ曲げたことを伝えます。これによってオールマイト自身の「凄惨な死の未来」もまた確定事項ではなくなったことを悟ったナイトアイは、積年の心の重荷から解放されたのです。
さらに涙を誘ったのが、愛弟子である通形ミリオへの遺言でした。ミリオは自らの個性を失った絶望と、師を救えなかった自責の念から、病床で泣き崩れていました。そんなミリオに対し、ナイトアイは残された最後の力で彼の未来を予知します。
「泣くな……私は……君の未来を見た……。君は立派なヒーローになっている……。誰よりも立派なヒーロー、ルミリオンになっている……!」
そして彼は、かつて笑顔を失っていた自分を戒めるかのように、周囲へ最後の教えを遺しました。
「元気と……ユーモアのない社会に……明るい未来など……やって来ない……。笑っていろ……」
厳格で滅多に笑わなかった男が、誰よりも温かい満面の笑みを浮かべ、心電図のフラット音とともに旅立っていきました。この言葉は後に、個性を失いながらも前を向き続けたミリオの魂の支柱となり、最終決戦での復活劇へと繋がる重要な伏線となりました。