では、なぜこれほどまでに表記の混乱が日常へ持ち込まれてしまったのか。引き金となったのは、日本産業標準調査会(JISC)が定めた文字コード規格「JIS X 0213」の2004年改定(いわゆるJIS2004)である。
従来の「JIS90」規格では、印刷標準字形との整合性を重視し、「辻」を含む一部の表外漢字にしんにょうの点が二つある字形が割り振られていた。しかし、2004年の改定によって、国語審議会が答申した『表外漢字字体表』の趣旨を反映し、一般的な印刷標準字形として「一点しんにょう」が標準デザインへと逆戻りした。
この変更が、フォントデザイン業界やOS開発現場に巨大な地殻変動をもたらすことになった。規格が変わったことで、同じテキストデータを送受信しても、受取側のOSバージョンや搭載フォントによって画面上の点の数が自動的に入れ替わってしまうという現象が定着したのである。