こうした食行動における知覚統合の研究は、学術的な場でも長年にわたり探求されてきた。日本調理科学会などの学会誌や研究発表においても、調理物における色彩や香りが人の嗜好性や味覚認識に及ぼす影響が多角的に論じられている。
かつて山梨県立大学などで食の認知科学を研究した下村道子名誉教授らの知見をはじめ、調理科学の専門家たちは「おいしさ」の大部分が口の中だけで完結しないことを示してきた。食品の見た目や匂いが先入観として働き、脳内で味覚データが補完されるプロセスは、単なる誤認ではなく、人間が環境から効率的に情報を処理し、食事を楽しむために進化させた適応機能の一環でもある。