映画史に残る名曲となった「パート・オブ・ユア・ワールド」だが、実は完成目前で作品から完全に削除されかけるという最大の危機に直面していた。初期のテスト試写会での出来事だ。試写室の暗闇の中で、一人の子供がポップコーンをぶちまけた。その様子を見た当時の制作幹部ジェフリー・カッツェンバーグは「子供たちの集中力が切れている。この静かな曲はカットすべきだ」と判断したという。
この決定に猛反発したのが、作詞家でありプロデューサーのハワード・アシュマンだった。彼は「この曲を取り去れば、アリエルの動機も映画の魂もすべて吹き飛ぶ」と激怒し、文字通り体を張って曲の存続を訴えた。アシュマンの主張は正しかった。主人公が何を望み、どこへ行きたいのかを歌う「I Want Song」と呼ばれる手法は、ミュージカル映画において観客を物語に没入させる最大の鍵だったのだ。土壇場でのカット撤回という劇的なドラマを経て、世界を感動させる奇跡の一曲はスクリーンに残された。