ファンタジーの世界で語り継がれるこのお菓子のルーツは、実在する悠久の歴史の中にある。その発祥は18世紀、栄華を極めたオスマン帝国の宮廷にまで遡る。皇帝を喜ばせるために宮廷職人が生み出した贅沢な逸品こそが、その真の姿だ。
現地トルコでは「心の安らぎ」を意味するロクムという名で愛され続けている。砂糖とデンプンをじっくりと煮詰め、ナッツやローズウォーターを加えて仕上げる伝統技術は、豊かなトルコ料理の食文化を象徴する至高の芸術だ。当時の宮廷製菓業が育んだ職人技は、やがてシルクロードや貿易船を通じてヨーロッパへと渡り、英語圏で「ターキッシュ・デライト(トルコの歓喜)」という名で広まっていった。