ただし、ここで立ち止まって検証すべき視点があります。それは、心温まるエピソードの裏側にある「美談の過剰消費」と「一方的な神格化」の弊害です。
ネット上で話題になった善行者やスポーツ選手に対し、賞賛が過熱するあまり、当事者のプライベートを暴いたり、聖人君子のような完璧な人格を求めすぎたりする現象が散見されます。心理学において指摘される「認知的バイアス」の一つに、一度ポジティブな印象を持った対象に対し、現実離れした過度な理想像を投影してしまう現象があります。善行を行った当事者が「そこまで褒め称えられると、普通の人間として生きるのが苦しい」「プレッシャーで夜も眠れない」と取材で苦悩を吐露するケースは珍しくありません。
また、救出劇などの動画が切り取られて拡散される際、前後の文脈が抜け落ち、救助者の危険行為が無批判に美化されるケースもあります。「感動した」という感情の起伏だけで終わらせず、その背後にある現実の重みや、関係者のプライバシーを尊重する冷静な視線を忘れてはなりません。
【プロの結論】情報過多時代における心理的バウンダリーと健やかな向き合い方
他者の感情やネットの空気に過剰に引きずられる「共依存的な情報接触」を避け、自分の精神状態を守るためには、自他を明確に分ける「心理的バウンダリー(境界線)」の確立が不可欠です。
家族関係や人間関係における「毒親問題」や「過干渉」が議論されるのと同様に、メディア空間においても「ニュースの感情に自分のメンタルを支配させない境界線」が必要です。悲惨なニュースに過度な同調をして心をすり減らす必要がないのと同時に、明るい話題に対しても「自分を元気づける栄養」として健全な距離感で受け止めるのが理想的です。
【ポジティブニュースの摂取に向いている人・注意が必要な人】
- 積極的に摂取すべき人:業務や私生活の重圧で無気力感を感じている人、他者への不信感が募り人間関係に閉塞感を抱えている人、就寝前にネガティブ思考のループに陥りやすい人。
- 接し方に注意すべき人:他者の美談と自分の現状を無意識に比較して「自分は何もできていない」と自己嫌悪に陥りやすい人、過剰な感情移入でニュースを見るたびに情緒が激しく乱れてしまう人。