自宅でモヒート作りに失敗する最大の原因は、「ミントをペストル(すりこぎ棒)で激しく潰しすぎること」にあります。ミントの葉を力任せに擂り潰すと、細胞壁が破壊されて葉緑素(クロロフィル)や強いタンニンが溶け出し、嫌な青臭さと渋みがカクテル全体に広がってしまいます。
バーテンダーが実践する抽出技術の真髄は、「葉を傷つけず、精油成分(エッセンシャルオイル)だけを表面に滲ませる」点にあります。ミントの清涼感成分であるカルボンやメントールは、葉の表面にある油胞(ゆほう)に含まれています。そのため、グラスに入れる前に手のひらでパンと1回叩くだけで、気圧差と微小な衝撃によって油胞が弾け、驚くほど芳醇なアロマが立ち上がります。
グラス内での作業も、マドラーの背を使ってライムジュースと砂糖に「香りを馴染ませる程度に軽く2〜3回押す」だけで十分です。決して葉を千切ったり、すり鉢のように回転させて擦り潰したりしてはいけません。
また、使用するミントの品種選びも味わいを大きく左右します。本場キューバで伝統的に使われるのは「イエルバブエナ(Hierba Buena)」と呼ばれるシソ科ハッカ属の品種で、柑橘を思わせる穏やかでウッディな芳香が特徴です。日本国内で流通しているハーブでは「スペアミント」が最もイエルバブエナに近く、甘やかで丸みのある清涼感が得られます。一方で「ペパーミント」はメントール含有量が多く刺激が強すぎるため、カクテルが薬っぽい印象になりがちです。自宅で作る際は、迷わずスペアミントを選択するのが王道です。