1階の喫茶室に漂う珈琲の香りの先で、ほぼすべてのテーブルに運ばれているのが看板スイーツです。なかでも訪れる者を魅了してやまないのが、赤レンガを模した四角いフォルムが特徴的な「十番館プディング」です。流行のやわらかくとろけるプリンとは一線を画し、卵黄のコクを凝縮させた固めの生地に、ほろ苦いカラメルソースが惜しみなく絡みます。器に添えられた季節のフルーツやアイスクリームとともに味わうプリンアラモード仕立ての贅沢感は、喫茶室メニューの中でも随一の完成度を誇ります。
そして、馬車道十番館の代名詞とも呼ぶべき銘菓がビスカウトです。1550年頃にポルトガルから渡来した西洋菓子を起源とし、職人の手によって一枚一枚丁寧に焼き上げられています。厚みのあるビスケット生地は、サクサクとした心地よい歯触りと豊かなバターの風味を放ち、サンドされたクリームとの相乗効果を生み出しています。
フレーバーは長年愛されるレモン、チョコレート、ピーナッツの3種類を基本とし、それぞれが異なる表情を見せます。爽やかな酸味のレモンは紅茶に、香ばしいピーナッツは深煎りのオリジナルブレンド珈琲に驚くほど調和します。ガス灯のレリーフが刻まれたその佇まいは、食べる工芸品と呼ぶにふさわしい風格を備えています。