メディアの現場に目を転じると、この問題の最前線がより鮮明に見えてくる。厳格な校閲体制を誇る出版業界や、三省堂をはじめとする有力辞書出版社では、「うる覚え」という原稿の表記は容赦なく赤字修正の対象となる。
ところが、映像コンテンツの世界では事情が異なる。テレビ番組の見逃し配信を支えるNHKプラスのテロップや字幕生成、あるいはYouTubeで日々大量に消費される個人配信の動画内において、「うる覚え」という誤ったテロップが校閲をすり抜けて表示される事例が頻発しているのだ。
動画テロップの視覚的影響力は絶大である。視聴者は画面に表示された文字を「正しい表記」として無批判に刷り込まれ、それが新たな誤用話者を再生産するサイクルを生み出している。活字から動画へと主たる情報摂取媒体がシフトした現代だからこそ、誤用の拡散スピードは過去の比ではない。