ペットショップの店頭やネット上の情報で散見される「この犬種ならアレルギーが出ない」「掃除の手間がゼロになる」という言説は、医学的・環境衛生学的に極めて不正確な誇大表現です。犬アレルギー対策と抜け毛の理由を正しく紐解くには、アレルゲンの発生源を正確に把握する必要があります。
アレルギーを引き起こす主原因は、犬の被毛そのものではありません。主犯となるのは、犬の唾液、皮脂腺、涙、尿などに含まれる微小なタンパク質(Can f 1やCan f 2など)です。これらのアレルゲンが犬の体表から剥がれ落ちたフケ(角質片)や毛に付着し、空気中に拡散することでアレルギー症状が誘発されます。
確かに、抜け毛が部屋中に舞い散るダブルコート犬種と比較すれば、フケを遠くまで撒き散らすリスクは格段に下がります。しかし、皮膚の新陳代謝がある限りフケの発生をゼロにすることは不可能です。抜け毛の少ない犬を迎えたにもかかわらず、愛犬が顔を舐めた際の唾液接触や、抱っこした際のフケ吸入によって重い喘息や蕁麻疹を発症する事例は後を絶ちません。
また、室内の掃除に関しても「抜け毛を吸い取る掃除機がけ」から解放されるだけであり、静電気で愛犬の被毛に吸着した花粉やホコリ、食事時に口周りへ付着する汚れの拭き取りなど、別のメンテナンス作業が発生します。「完全にアレルギーを防げる犬」「まったく掃除がいらない犬」はこの世に存在しないという冷徹な事実を、飼育前に強く認識しておく必要があります。