愛犬が鼻先を尻尾にうずめるように眠る姿は、通称「ドーナツ寝」や「カーリング」と呼ばれます。獣医師や動物行動学者への取材によると、犬が丸まって寝る理由は主に以下の3つの要素が複雑に絡み合っています。
第1の要因は、野生時代から受け継がれた生体防御本能です。犬の祖先であるオオカミは、外敵の襲撃に備えて急所である「柔らかい腹部(内臓)」を隠し、太い血管が通る首元を保護しながら睡眠をとっていました。室内飼育が定着した現代においても、この原初的な自己防衛プログラムは色濃く残っています。
第2の要因は、外気温への適応、すなわち犬が丸まって寝る寒い環境への生理反応です。体積に対する表面積を最小限に抑えることで、体表面からの放熱を極限まで防ぎます。特に被毛の薄いシングルコートの犬種(トイプードル、チワワ、イタリアングレイハウンドなど)は、人間が快適と感じる室温でも冷えを感じやすく、熱を逃がさない姿勢を本能的に選択します。
第3に見逃せないのが、犬の丸まる心理に潜む精神的プレッシャーや犬が丸まって寝る警戒心です。来客があった直後、近隣の工事騒音、引っ越しや模様替えなど、縄張りの安全性が揺らいでいるとき、犬はいつでも飛び起きられるよう筋肉の緊張を保ちながら丸くなります。熟睡しているように見えても、耳が頻繁にピクピクと動いていたり、物音に対して即座に目を開ける場合は、深いノンレム睡眠に入れていない明確な証拠です。