どれほど優れた楽曲であっても、歌い手の力量が追いつかなければその世界観は成立しません。『はがゆい唇』が傑作たる所以は、高橋真梨子の圧倒的なヴォーカル表現力にあります。ペドロ&カプリシャス時代から培われたソウルフルな歌声、ジャズやシャンソンの陰影を帯びた声の倍音は、言葉の一つひとつに生々しい命を吹き込みます。
この名唱がお茶の間を震撼させた象徴的な出来事が、1992年の『第43回NHK紅白歌合戦』での歌唱でした。実に8年ぶりの紅白出場となったステージで披露された『はがゆい唇』は、抑制の効いたAメロからサビへと向かう劇的なダイナミクスで会場を圧倒。視聴者に鮮烈なインパクトを残しました。
高橋真梨子の代表曲といえば『for you...』『桃色吐息』『ごめんね…』『五番街のマリーへ』など枚挙にいとまがありませんが、その中でも『はがゆい唇』は最もドラマティックで激情的な側面を象徴する楽曲として高く評価されています。