現在、徳島県三好市山城町は「妖怪の里」として全国のファンや研究者を集めています。その象徴となっているのが、藤川谷の道沿いに鎮座する「子泣き爺の石像」です。
2000年代初頭、地域おこしの一環として地元有志や保存会が中心となり、地元特産の青石を用いて建立されたこの像は、世界妖怪協会(水木しげる会長=当時)から正式に「怪遺産」として認定を受けました。現地を訪れると、切り立った断崖と深い森が迫り、真昼でも谷底から冷涼な風が吹き抜ける独特の地形が広がっています。
地元の観光関係者や長年伝承を守り続ける古老たちを取材すると、「昔は子どもが夜遅くまで山で遊ばないよう、『子泣き爺が出るぞ』と厳しく戒めたものだった」という声が聞かれます。単なる観光スポットとしてのモニュメントにとどまらず、険しい自然の中で生き抜く知恵や、危険な山道から子どもたちを守るための生活規範がそこに息づいているのです。年間を通じて多くの観光客が訪れる現在も、石像の周囲には静謐でどこか神秘的な空気が漂っています。