華やかなトレンドの一方で、日々の暮らしに寄り添う和食・定食・郷土料理の食堂文化も北上の大きな魅力だ。北上市(岩手県)は古くから交通の要衝として栄えた歴史を持ち、旅人や労働者の胃袋を満たしてきた大衆食堂が今も元気に暖簾を守り続けている。
お盆いっぱいに並ぶ小鉢の数々、ツヤツヤに炊き上げられた岩手県産米の「ひとめぼれ」、そして出汁の効いた熱い味噌汁。素朴でありながら、丁寧に出汁を取った煮物や、旬の山菜を使った天ぷらには職人の技が宿る。千円札一枚で満腹になれる圧倒的なコストパフォーマンスは、チェーン店では決して真似のできない温もりに満ちている。
「毎日食べても飽きない味を提供することが、街の食堂の誇りです」
そう笑う割烹着姿の女将さんの手料理を求めて、昼時には現場作業員から近所の高齢者までが肩を並べる。どこか懐かしく、心まで満たされる時間がここには流れている。