この比類なき食体験の根底には、山梨県甲府市という風土と、一人の先駆者の執念が息づいている。大正期、まだ日本で本格的なワイン造りが根付いていなかった時代に、株式会社サドヤの創業者・今井精三はヨーロッパ系ワイン専用葡萄の栽培に果敢に挑んだ。甘口の酒精強化ワインが市場を席巻していた時代に、食事とともに愉しむ本物のドライワインを追い求めた彼の覚悟が、今日の礎だ。
レストランの地下に広がるサドヤ地下ワインセラーには、今なお往時のレンガ造りの貯蔵庫や熟成設備がそのままの空気を保って遺されている。ひんやりと冷えた薄暗い回廊を歩くだけで、ワインが命を宿していく過程を肌で実感できる。サドヤワイナリーが守り抜いてきたこの場所があるからこそ、テーブルに運ばれる一滴に圧倒的な説得力が宿るのだ。