音のない世界から再び社会の第一線へと復帰を果たした先駆者たちの物語は、いつの時代も人々に鮮烈な衝撃を与える。アメリカのラジオ界で絶大な影響力を誇ったラッシュ・リンボーは、2001年に突発的な自己免疫性疾患により完全失聴の危機に瀕した。声とリスナーの反応だけが頼りのトーク番組ホストにとって、耳が聞こえなくなることは致命傷に等しい。しかし彼は人工内耳の手術を受け、わずか数カ月でスタジオに復帰。機械を通して変換された特異な電気信号の「音」を脳に再学習させ、ミリオンリスナーを熱狂させ続けた。
美の象徴として世界中から称賛を浴びたヘザー・ホワイトストーンの決断も、歴史的な転換点となった。1995年に耳が聞こえない女性として初めてミス・アメリカの栄冠を勝ち取った彼女は、当初、手話や読話を中心とした生活を送っていた。だが2002年、より広範な世界と音で繋がりたいという強い意志から人工内耳を選択。家族の声や鳥のさえずりを初めて耳にした瞬間の涙は、世界中のメディアで報じられた。
さらに、『超人ハルク』の主演俳優であり伝説的ボディビルダーのルー・フェリグノもその一人だ。幼少期の重度難聴から長年補聴器を使用してきた彼は、60代を迎えて人工内耳の装用を決断した。「風の音や、人がささやく微かな息遣いがこれほど美しいものだと知らなかった」と語る彼の言葉は、年齢に関係なく新たな音の世界へ踏み出す勇気を与えている。