情緒豊かに映る路地裏ですが、歩行者や観光客が絶対に軽視してはならないのが、路地裏治安と危険の真相です。
警察庁が公表する犯罪統計や地域安全マップを精査すると、路上強盗などの凶悪犯罪の総数は年々減少傾向にあるものの、街頭防犯カメラの死角となる路地裏では、深夜帯における痴漢や盗撮、泥酔者同士の暴力事案が局所的に発生しています。街灯の間隔が広く照度が不十分な小道や、見通しの利かないクランク(直角の曲がり角)が連続するエリアは、外部からの監視の目が届きにくく、防犯環境設計(CPTED)の観点からも脆弱性を抱えています。
さらに深刻なのが、路地裏探訪の現在と法的規制にまつわる問題です。散策者が何気なく足を踏み入れている小道が、実は公道ではなく特定の個人や住民共有の「私道(私有地)」であるケースが少なくありません。法的には、正当な理由なく他人の敷地内に立ち入る行為は、刑法第130条前段の「住居侵入罪(邸宅侵入罪)」に抵触するリスクを孕んでいます。
近年のオーバーツーリズムに伴い、特に摩擦が激化しているのが路地裏写真撮影マナーと注意点です。京都の祇園周辺では、景観保全と住人の平穏な生活を守るため、協議会によって私道での無断撮影に罰金を科す看板が設置され話題となりました。東京の谷中や神楽坂などの下町エリアでも同様の事態が起きています。
「洗濯物が干してある軒先や、玄関の表札を無遠慮にスマートフォンで撮影してSNSに公開する行為」は、住人からすれば明白なプライバシー権の侵害です。歴史ある街並みはテーマパークのセットではなく、人々の生活の場。散策の際は「大声での会話を控える」「私道標識がある場所には立ち入らない」「人物や民家の内部が写り込むアングルの撮影は避ける」といった、当たり前の節度が厳しく求められています。