映画版と貴志祐介の原作小説を比較すると、作品が目指したエンターテインメントの方向性に明確な違いが存在します。両者の最大の違いは、蓮実の内面描写とバイオレンス表現の質感にあります。
原作小説は、蓮実がいかに冷徹な論理とIQで周囲をチェスの駒のように操り、障害を排除してきたかを綿密な心理戦とともに描く「純度の高いサイコパス・サスペンス」です。読者はハスミンの思考回路に深く潜り込み、倫理観が崩壊していく過程をロジカルに追体験させられます。
対して三池崇史監督がメガホンをとった映画版は、ジャズの名曲「マック・ザ・ナイフ(モリタート)」をバックに散弾銃を乱射するシーンに象徴されるよう、過激なブラックユーモアを内包したスラッシャー・エンターテインメントへと昇華されています。蓮実の超人的な殺人鬼としてのカリスマ性を伊藤英明が怪演し、視覚的なショックとテンポ感を重視したジェットコースタームービーとしての完成度が高く評価されています。