人々が抱く「処刑」という言葉の直接的な刷り込みは、2015年1月にシリアで発生した過激派組織「イスラム国(ISIL)」による邦人拘束・殺害事件に端を発しています。当時、千葉県出身の湯川遥菜さんとジャーナリストの後藤健二さんが人質となり、世界に向けて配信された脅迫動画と殺害画像は日本社会に甚大なショックを与えました。
この事件では、過激派側が身代金要求や自爆テロ犯の釈放を迫り、期限が切れるとオレンジ色の服を着せた人質を砂漠でひざまずかせ、斬首する映像を「処刑」として世界に誇示しました。心理学的な観点から見ると、「イスラム系過激派」「砂漠」「日本人男性の人質拘束」「無残な死」という象徴的記号があまりにも鮮烈だったため、一般市民の記憶のアーカイブの中で、アフガニスタンで起きた銃撃テロ事件の記憶とシリアの処刑事件が混濁してしまったと言えます。
さらに、SNSのタイムラインやまとめサイトでは、文脈を削ぎ落とした「日本人 処刑」「首切り」といった扇情的な単語だけが拡散され、検索エンジンのサジェストに「アフガニスタン 日本 人 処刑」という歪んだ複合ワードが定着してしまったのが実情です。