ノミネート作品の中でも、読書界を超えて社会的な議論を巻き起こしたのが朝井リョウの『正欲』だ。「多様性」という甘美な言葉の裏側に隠された、マジョリティには理解しがたい人間の欲望や孤立。言葉で簡単に括ることのできない生の実態を突きつけた本作は、後に豪華キャストによる映画化が実現し、観客の価値観を激しく揺さぶった。
一方で、エンターテインメントの極致として読者を翻弄したのが『六人の嘘つきな大学生』だ。IT企業の最終選考に残った6人の就活生が、たった1人の採用枠を巡って繰り広げる密室の心理戦。伏線が次々と回収される快感と、人間の裏表をあぶり出す展開は大きな反響を呼び、こちらも実写映画化決定の報とともに空前のブームを巻き起こした。どちらの作品も、現代人が抱える「他者からの評価」という呪縛を容赦なく暴き立てている。