Web上の情報にはいくつか見過ごせない誤解が存在します。読書開始前に把握しておくべき3つの盲点を解説します。
誤解1:「『祈りの幕が下りる時』でシリーズは終了した」
出版社のプロモーションや映画のキャッチコピーで「加賀恭一郎シリーズ完結!」と大々的に打ち出されたため、第10作で完全に終わったと信じ込んでいる読者が少なくありません。しかし、2023年に発表された『あなたが誰かを殺した』が証明するように、加賀自身のルーツをめぐる物語は一段落したものの、探偵役・加賀恭一郎の活躍は現在進行形で続いています。
誤解2:「最新作『あなたが誰かを殺した』から読んでも問題ない」
単体の本格ミステリとして非常に高い完成度を誇るため、「最新作から読んでも話の筋は追える」のは事実です。しかし、作中で見せる加賀の飄々とした佇まいや、周囲の人物に対する圧倒的な包容力・洞察力は、過去10作の修羅場を経て形成されたものです。少なくとも『新参者』や『悪意』を未読のまま挑むと、加賀恭一郎という稀代のキャラクターの凄みが十分に伝わらないリスクがあります。
誤解3:「犯人当ての2作は解説なしでは楽しめない」
『どちらかが彼女を殺した』『私が彼を殺した』の2作は、文庫版の巻末に袋とじ解説や解題が付属している版があります。「正解が書かれていないからモヤモヤする」と敬遠する人もいますが、作中の細かな記述(利き手、薬の包み紙、時計の針など)を丁寧にメモしながら読み解けば、自力で正解に辿り着けるフェアな構造になっています。これらを読み飛ばすのは極めて惜しい体験です。