作中では「星の子」と「悪魔」という言葉が時に混同されがちですが、両者の間には本質的な差異が存在します。この違いを理解することが、荒地の魔女がなぜハウルの心臓を執念深く狙い続けたのかを解き明かす鍵となります。
本来、星の子は善悪の概念を持たない純粋な自然物・宇宙のエネルギー体です。一方の「悪魔」とは、人間の欲望や契約を介して自我と呪縛を獲得した状態を指します。つまり、星の子そのものが悪なのではなく、人間の魂(心臓)と交わった結果として生まれた副産物が「火の悪魔」なのです。
かつて王室付きの魔法使いとして栄華を誇った荒地の魔女もまた、過去に自らの体に悪魔を宿らせた経験の持ち主でした。報道や研究論文等でも指摘されている通り、彼女は若さと美貌を保つために悪魔の力を利用しましたが、やがて悪魔に肉体と精神を喰らい尽くされ、荒野へと追放されました。
老いさらばえ、サリマンによって魔力の源を剥奪された荒地の魔女にとって、「若く瑞々しい魔法使いハウルの心臓(カルシファー)」は、自らの失われた美と生命力を一瞬で蘇生させる究極の秘宝でした。彼女が燃え盛るカルシファーを素手で抱きしめ、大火傷を負いながらも離そうとしなかったのは、一度悪魔に魂を売り渡した者が抱く、若さと全能感への病的な執着の象徴だったと言えます。