帯を定着させた後は、いよいよ弓道袴の紐の結び方へと進みます。道場で多くの射手が「行射中に前紐がずり落ちてくる」と嘆く原因の多くは、紐の締め付け不足ではなく、交差させる位置と角度の誤りにあります。正しい手順を踏めば、力任せに引っ張らなくとも摩擦の力で絶対に緩まない結束が完成します。
まず、袴の前板(上端)を帯の上端に合わせてあてがい、長い前紐を背中へ回します。背中で交差させる際、帯の結び目の「上」を通すのが基本です。交差させた紐を再び前方へ引き戻し、お腹の前で左右の紐を交差させます。このとき、左右の紐を平らに重ね、下になった側の紐を上からくぐらせて一結びし、しっかりとテンションをかけます。余った紐は脇へ折り返し、袴の脇あきの内側を通して後ろへと逃がします。
次に、背中側の後板を持ち上げて帯の上に乗せ、後紐を前へ回します。ここからが射手の品格が最も顕著に現れる弓道十文字結びの手順です。
【十文字結びの完全ステップ】
ステップ1:前へ回した短い後紐を、お腹の前(中央よりやや下)でしっかりと固結び、あるいは本結びで一度結束します。この時点で結び目が緩まないよう、結び目を指先でしっかりと押さえます。
ステップ2:下から出ている紐を上に折り返し、縦の芯を作ります。上から出ている紐をその芯の上から覆うようにして下へ引き抜き、中心に堅牢な正方形の結び目(基部)を形成します。
ステップ3:左右に分かれた紐の端を、それぞれ等しい長さに整えながら左右水平にピンと引き伸ばし、水平の「一文字」を完成させます。
ステップ4:上下に残った紐の端を、左右の横紐と交差するように直角に整え、縦方向の長さを均等に切り揃えるように内側へ折り込みます。これで縦横が寸分違わぬ美しい「十文字」が完成します。
十文字の端が垂れ下がったり、縦横のバランスが崩れていると、入場の瞬間に審査員の視線がその乱れに吸い寄せられます。結び目の中心をしっかりと締め込み、四方の長さが均整を保っている状態こそが、高い集中力と礼節の証となります。