ストーカー行為に及ぶ人間が口にする「これほど愛しているのに」「あなたのためを思って」という言葉を、額面通りに受け取ってはいけません。精神医学や犯罪心理学の臨床において、彼らが抱いている感情は「愛情」ではなく、自己愛の防衛と対象への執着と定義されます。
健常な精神状態であれば、告白を断られたり別れを告げられたりした際、悲哀や失望を感じつつも「相手には相手の意志がある」という他者性を尊重し、現実を受け入れます。しかし、ストーカー気質を持つ人物は拒絶された側の心理メカニズムとして「認知の歪み」を強烈に発動させます。「彼女が本心から断るはずがない」「誰かに脅されているに違いない」「もっと自分の本気度を伝えれば元に戻る」といった自己正当化のシナリオを脳内で構築し、現実の拒絶を「一時的な誤解」へとすり替えてしまうのです。
このストーカーの思考回路と歪んだ愛の根底にあるのは、「相手は自分の意のままになるべき存在」という強烈な所有意識です。相手を一人の自立した人間としてではなく、自らの精神的安定を保つための付属物(自己対象)として認識しているため、拒絶されること自体が「自己の尊厳に対する理不尽な攻撃」と感じられ、やがて被害者面をした攻撃性へと反転していきます。