ネット上や愛好家の間で囁かれる「スイカを食べさせると短命になる」という説は、昆虫生理学の観点からも科学的に裏付けられた事実です。ただし、スイカ自体にカブトムシを殺傷する毒素が含まれているわけではありません。真の引き金となるのは、極端な水分過多と栄養素の欠落です。
昆虫には哺乳類のような腎臓はなく、体液の恒常性維持や老廃物の排出は「マルピーギ管」と呼ばれる器官が担っています。野生のカブトムシが主食とするクヌギやコナラの樹液は、糖分(ショ糖・果糖・ブドウ糖)やアミノ酸、ポリフェノールが濃縮された粘度の高い液体です。これに対し、スイカの可食部は約92〜93%が純粋な水分で構成されています。
カブトムシがスイカを摂取し続けると、体内に過剰な水分が流れ込み、浸透圧のバランスが崩れます。その結果、マルピーギ管から直腸へ大量の水分が送り出され、俗に「下痢」と表現される水様便を絶え間なく排泄することになります。体力を激しく消耗するだけでなく、必要なアミノ酸や糖分を満足に吸収できないまま飢餓状態に陥り、結果として成虫の寿命を大きく縮めてしまうのです。