従来の美学を根底から覆したのが、北野武監督による衝撃作『アウトレイジ』シリーズだ。それまでの大げさな装飾性を削ぎ落とし、現代の組織暴力が持つサラリーマン的冷酷さと不条理な暴力を描くため、アイウェアの使い方も極めて現代的にアップデートされた。
北野作品におけるヤクザ映画の人物たちは、一見するとどこにでもいるビジネスマンのようでありながら、ふとした瞬間に無機質なサングラスを装着する。感情を排した無表情なレンズ越しに発動される暴力は、観客の心に恐怖を植え付ける。この冷徹な視覚演出こそが、世界的な評価を獲得した北野美学の真骨頂と言えるだろう。