1990年代半ば、アニメーション映画産業はまさに黄金期の渦中にあった。『美女と野獣』や『ライオン・キング』の大ヒットに続き、ウォルト・ディズニー・カンパニーは「アカデミー賞作品賞を狙える本格的な大人の歴史劇」を目指して『ポカホンタス』の制作に着手した。スタジオは人種描写への批判を警戒し、ネイティブ・アメリカンの活動家や俳優をリサーチや声優陣(主人公の父親役にラッセル・ミーンズを起用など)として積極的に起用する試みを行っていた。
しかし、制作陣の配慮や努力にもかかわらず、最終的に映画のプロットを決定づけたのは「ハリウッド的な王道ロマンスとハッピーエンド」という興行主導の論理だった。歴史的真実よりも娯楽性を優先させた結果、スタジオの意図を超えて差別的構造を補強する作品が完成してしまった事実は、当時の映画製作が抱えていた限界を如実に物語っている。